訪問看護

訪問看護(在宅看護)の抱える課題と今後の展望

投稿日:2019年6月26日 更新日:

病気療養をするなら、できれば住み慣れた自宅で家族と過ごしたい、という人は多いです。また、病院に入院しても、自宅療養が可能とみなされれば長期化する前に退院を促されます。

そのため、訪問看護(在宅看護)はいま需要の高まっている医療サービスです。しかし、まだ課題があるのも現状です。どのような部分が問題で、今後どうなっていくのか、解説していきます。

訪問看護(在宅看護)の抱える課題

まず、訪問看護というサービスが抱えている課題について、くわしく解説します。

人材不足

日本看護協会出版会編集『平成28年 看護関係統計資料集』のデータによれば、訪問看護師の数は全国で約4万人となっています。この数字は、看護師全体の約2.6%です。さらに、平均年齢は47歳と若手が足りていません。

日本看護協会・全国訪問看護事業協会・訪問看護財団によれば、超高齢化社会に進んでいる日本において、2025年には15万人が必要であると発表しています。

このような数字からも、訪問看護の需要に対して訪問看護師の数という供給が追いついていないことが分かります(データ元:『平成28年 看護関係統計資料集』日本看護協会出版会編集)。

小規模の訪問看護ステーションが多い

日本看護協会『訪問看護事業所数の減少要因の分析及び対応策のあり方に関する調査研究事業』というデータでは、訪問看護ステーションの規模に関する調査も掲載されています。

これによれば、職員5人未満の小規模ステーションが全体のおよそ6割を占めています。また、小規模ステーションほど依頼が少なく、規模が大きいと依頼が多く業務過剰の傾向にあるのが現状です。

そのため、小規模なステーションは収支の状況が悪く、比較的規模の大きいステーションだと、職員の負担が大きいという部分が課題となっています。

ニーズの多様化

さまざまな介護・介助を必要とする医療依存度の高い患者さんや、難病・ガンや子どもといった利用者も増えており、そのニーズは多様化しています。

それぞれの病状に合わせた適切な処置や対応を求められるため、幅広い知識と限られた医療機器での臨機応変な対応が求められるでしょう。そのため、訪問看護師の役割は大きいといえます。

さらに、患者さんやご家族が不安を訴えるなどして、話を聞く対応もすることがあります。報酬の得られない相談ごとを受けることもあるようです。また、場合によって死後処置までおこなうこともあります。

訪問看護(在宅看護)の今後

前述のように、日本看護協会・全国訪問看護事業協会・訪問看護財団が「2025年には訪問看護師が15万人必要」だと発表しました。なぜこのような発表をおこなったかというと、以下のような理由からです。

超高齢化社会の到来

現在、日本では75歳以上の高齢者が加速度的に増加していて、2025年には人口の3分の1が65歳以上になるといわれています。そのため、訪問看護の需要もより増加していくことが予想されます。

在宅中心の医療への転換

高齢者が増加するなかで、国家財政にかかる医療・社会保障費が圧迫している状態です。そのため、病床の効率的な活用や長期入院での医療費抑制のため、できるだけ在宅での医療を推奨する流れになってきています。

地域包括ケアの中核的存在として

地域包括ケアとは、住み慣れた地域で最期まで自分らしく生活できるよう、地域の医療・介護など各施設が連携して利用者をサポートする取り組みです。

国は2025年に向けて、在宅医療の推進とともに地域包括ケアの実現を目指しています。この流れおいて、訪問看護は医療と生活に密着しており、各施設の橋渡しをおこなえる重要な存在となることでしょう。

訪問看護アクションプラン2025

このような流れから、日本看護協会・全国訪問看護事業協会・訪問看護財団が2025年に向けて訪問介護における課題を解消するため、「訪問看護アクションプラン2025」というプランを策定しました。

そのアクションプランとは、つぎのような内容になっています。

訪問看護の量的拡大

  • 全国どこでも24時間365日、必要なときに訪問看護サービスを提供できるようにする
  • 訪問看護師が安心して勤務できるように制度を整え、2025年までに15万人に増やす
  • よりスムーズにサービスが提供できるよう、医療機関と訪問看護ステーション看護師を相互育成する

訪問看護の機能拡大

  • 介護施設やグループホーム入所者、学生などでも利用できるようにする
  • 24時間体制、重症患者や看取りも対応できる「機能強化型訪問看護ステーション」を二次医療圏に最低でも1ヶ所設置する
  • 訪問、通い、宿泊などの機能を持つ「看護小規模多機能型居宅介護」を全市町村に最低1ヶ所は設置する
  • ICT化し、地域内の多機関・多職種と情報共有し、業務効率化を進める

訪問看護の質向上

  • 健康上のニーズに合った、適切な処置やケアをおこなえる人材を育成する
  • ほかのさまざまな職種ともチームとして連携を図り、訪問看護師ともども学ぶ場を用意する
  • 訪問看護ステーション管理者の研修を充実させ、マネジメント力を向上させる
  • 対象者の視点での基礎教育を充実させるため、教育機関とも連携を図り、看護学生への指導も向上させる

地域包括ケアへの対応

  • 訪問看護の機能や役割を国民、地域住民に情報発信して認知を広める
  • 地域の多職種と連携するための中核的存在となり、ネットワーク、ケアシステムの創造に尽力する
  • 利用者の重症化に対応するため、看護小規模多機能型居宅介護等とも連携して多機能なケアを実現する
  • 社会情勢や地域住民のニーズに応じたアクションプラン実現のための政策提言をおこなう

まとめ

このように、訪問看護にはさまざまな課題がありますが、超高齢化社会になるといわれる2025年に向けてアクションプランがあり、実現のために動き出しています。

現在は人材不足や高機能で大規模な施設の不足などがいわれていますが、今後改善されれば訪問看護の仕事もより人気の職種になる可能性が大いにあるでしょう。

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  • この記事を書いた人
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矢口聡子(看護師)

【在籍】日本医科大学第一病院、アレルギー臨床研究所、佐々総合病院、クリニック等、訪問看護ステーション勤務。看護師歴31年。【スキル】訪問看護、精神訪問看護、BOC(口腔ケア)プロバイダー【経歴】1967年生まれ。日本医科大学付属看護専門学校卒。大学病院では小児科(白血病)病棟勤務。総合病院では終末期病棟勤務(レスピレーター管理、看護学生指導担当)。

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