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リレーエッセイ〜看護のすきま〜【 vol.4 広川良子】

「メディケアナース」は、看護師として働くひとの休日に“のんびり”を届けるウェブマガジンです。私達が考える“のんびり”とは「私を楽しみ、私と語らう時間」。連載企画「リレーエッセイ〜看護のすきま〜」は、看護師として働くひとによる“背伸びしない”エッセイ集です。人と人のすきまを紡ぐ看護師が「休日の私」をテーマにエッセイを綴ります。

広川良子

何かを始めようとするとき、いまひとつ踏み込めないけれど、一通りはやってみる。 

周りの人に宣言してみたり、紙に書いてみたり。

でも「そんなの言いましたっけ?」顔は非常に得意。濁すのも得意。

そんな私が何かを始めるときの方法は二つ。

「もうこうなったらやる以外に生きる道はない!」という根性論を駆使するか、すらーっと、自分でも気付かないくらいのどさくさ感を前面に出して紛れこますか。

考えるという行為の一歩先のような、一歩手前のような、そんな本能を使ってみる。そうやって始めたことを見てみると「なんだこんなことか!」と得意気になって「いくつになっても挑戦はしてみるもんだな」と毎回思うのだが。

また何かを始めようとすると、初めて出会うかのように一気に人見知り感が舞い戻り、もじもじタイムが始まるのだ。経験が増えるというのは、そんなものなのかもしれない。

そんなこんなの私の最近の挑戦は、干し野菜を作ること。

根性論も、どさくさ感も発揮せずに始められそうなのだが「失敗したらせっかくの野菜が無駄になるよなぁ」とか「大根吊るしてるところをご近所さんに見られたら『あ、あのお家大根干してる!』って変に思われるかもなぁ」とか。到底心配する必要もないことで、時間をぜいたくに使ってしまうのが常である。

だから今回は「わたし今から料理を作りますよ」というどさくさ感を出しながら、干し大根用に千切りにしたり、イチョウ切りにしたり。

「洗濯物を干しますよ」というどさくさ感を出しながら、切った大根を干していく。

カラッとした晴天と、時折吹く強い風が良い具合に大根を干し上げていく。 

そうして出来た切り干し大根への愛おしみはなんとも格別で、私の挑戦へのご褒美だなぁなんて、にんまりしながら美味しく戴いた。 

今はすっかり味をしめて干し芋を作ってみたり。たくあんにも挑戦してみようかなと目論んでみたり。

使い道がいまいち分からないけれど、輪切りみかんを干したり孤軍奮闘している。

何かを始めようとするとき、それを打ち消そうとする力は侮れないけれど、上手く付き合いながら、また一つ、新しい経験をしていくのはいくつになってもやはり楽しいし、それが新たなきっかけを運んでくれる。